2015年7月14日火曜日

N2レーザーの研究紹介

我々の研究室では,N2レーザー(波長337 nm)を使用し,軸方向放電励起気体レーザーの諸特性の調査を行っています.

これまでに,気体レーザーの常識とは異なる方法で,レーザー発振を観測しました.例えば,ランプと同じ方式による発振やスイッチレス発振,高品質ビーム発振などがあります,

「ランプと同じ方式による発振」
エキシマレーザーとエキシマランプは,励起メカニズムが異なり,エキシマランプの放電方式ではエキシマレーザーは発振しないと考えられています.エキシマランプの放電方式でも,軸方向放電励起方式を組み合わせることにより,N2レーザーが発振することを実証しました.

「スイッチレス発振」
これまで,紫外気体レーザーでは,数十nsの高速の電圧パルスを放電管に印加しなければならないと考えられてきました.しかし,軸方向放電励起方式を用いることにより,N2レーザーでは,立ち上がり時間27 μsの遅い電圧パルスでもレーザー発振すること実証しました.

「高品質ビーム発振」
紫外気体レーザーの課題の一つは,ビーム品質にあります.市販の紫外気体レーザーは矩形ビームで,ビーム広がり角が3 mrad以上となっています.軸方向放電励起N2レーザーにおいて,放電の制御だけにより,円形ビームでビーム広がり角0.3 mradのきれいなビームが生成可能であることを実証しました.

また,励起回路の開発や放電管サイズの調査により,非常な簡便な装置構成による高出力や低容量・高効率発振が可能となりました.

我々の一般的なN2レーザー装置は,長さ10 cmから30 cmのレーザー管とスパークギャップ,100 pFから1000 pF程度の充電コンデンサ,高電圧パルス電源(ロシア型パルス電源とトランス)で構成されます.
軸方向放電励起N2レーザー,レーザー管の長さ28 cm
発振中
レーザービーム
写真のような長さ28 cmのレーザー管では,300 μJ程度の高出力発振が可能です.また,これまでに,写真のような簡単な装置構成の軸方向放電励起N2レーザーでは,700 μJ程度の出力までは観測しています.

現在は,さらなる単純化や高繰り返し化などの研究を行っています.

発表論文
1) K. Uno, et al., “Longitudinally excited N2 laser with low beam divergence”, Rev. Sci. Instrum. 85, 096108 (2014).
2) K. Uno, et al., “Comparison of modified driver circuit and capacitor-tranfer circuit in longitudinally excited N2 laser”, Rev. Sci. Instrum. 84, 043103 (2013).
3) K. Uno, et al., Longitudinally excited N2 laser without high-voltage switches”, Rev. Sci. Instrum. 79, 063107 (2008).
4) K. Uno, et al., “Longitudinally Excited N2 Laser Pumped by Lamplike Discharge”, Jpn. J. Appl. Phys. 45, 1651-1653 (2006).

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